さて、今日は専門の試験についてです。
以下の9つの専門家から4つを選択して解いていきます。
①疫学
②医学統計
③予防医学
④健康教育
⑤精神保健
⑥医療倫理
⑦医事法
⑧公衆衛生調査方法論
⑨医療情報システム
制限時間は80分。
専門の試験を解くうえでのポイントは、この9つの問題、難易度や問題量に幅があるということです。
常識でわいあい書けるんじゃないか?というものもあれば、20分じゃ無理だろっていうものもあります。
ですので、予め過去問を解いて、それぞれの問題の傾向と、自分との相性を把握しておきましょう。
9つの問題に対して準備をしていく必要はないです。4題、多くとも6題くらいに絞って対策しておけば良いのではないでしょうか。
そういう意味では、「いかに捨てるか」が大切になってくる問題だと思っています。
さて、各問題の傾向についてお伝えします。
①疫学
予防疫学教室の佐々木教授が授業で扱っていたテーマが例年出題されているので、個人的には「佐々木先生が出題者なのかなぁ~?」なんて思っています。
ですので、前回のブログでも紹介した「わかりやすいEBNと栄養疫学」を読んでおくのが良いかと。
問題の傾向としましては、具体的な疫学調査を例題として紹介した後に、その結果を疫学的な観点から解釈させるというようなものが多かった気がします。
例えば、「BMIが上がるにつれて肺炎発症率が上昇する。一方で、BMIが上がると死亡率は下降する。なぜこのように異なる結果が観察されたのか、考えられる具体的なシナリオを2つ提案せよ」みたいな(実際の問題をかなり要約しているので、あまりあてにしないでください汗)。
あとは、ある研究と、そこで生じうるバイアスを考察させたうえで、そのバイアスを回避するにはどのような研究デザインを組めばよいか、とかでしょうか。
こうして書くと、疫学初見の方は「うっ」と思われるかもしれませんが、実はそんなに難しくありません。というのも、①疫学で出題される問題は基本的な疫学知識があれば、その応用で十分に解答できる内容になっています。
疫学の教科書を開くと必ず書いてある因果の逆転や、交絡、バイアス、偽相関などの疫学用語がありますが、要は「これらの基本的な疫学が理解できていますか?」ということを問うている問題です。
いきなり問題文を読むと混乱してしまうかもしれませんが、そこで問われることは必ず基本的な疫学の知識で説明可能なものになっているはずなので、落ち着いて自分の中の疫学の知識を探ってもらえれば、そこに答えがあると思っています。
ちなみに、佐々木先生の予防疫学教室のHPにて、先生の講義の資料を丁寧に紹介してくださっています。
ここで語られる内容が極めて①疫学に近しい内容になっていると思うので、ぜひ読まれることをお勧めします。
②医学統計
専門の統計は、以前述べた統計学一般の問題に比べて難易度が高いです。
文系出身の私にはやや辛く、捨て問にしていました。
なので、これについてはよく分かりません。
③予防疫学
去年までは問題がほぼ毎年同じであり、狙い目だったのですが、今年からちょっとだけ傾向が変わりました。
例年、スクリーニング検査における感度・特異度に関する問題で、極めて単純な計算で答えが出せるものでした。今年もスクリーニング検査の問題だったのですが、感度・特異度ではなく累積罹患率・累積死亡率を求めさせる問題でした。難易度自体は例年とは変わっていないと思われます。
来年からどうなるかは分かりませんが、ここらへんの数字の操作が得意な人にはお勧めの問題です。
④健康教育
おそらく、保健社会学教室の橋本教授が出題者だと思われます。
というのも、橋本教授が学部時代の授業で行っていたことが想起されるような問題になっているからです。
その授業は二つのパートに分かれています。まずは、ヘルスサイエンスに関する理論の学習。そして、その理論を基にした、具体的な臨床の課題への対策の考案。
ちなみに今年の問題は「ある職場の肥満対策に、Minklerらが述べた”健康教育における専門家の2種類の関わり方”(本文中に詳細は記載されています)を適応し、それぞれどのようなアプローチにするか論ぜよ」というものでした。
対策する上で大切なのは、ヘルスプロモーションにおける幾つかの主要な理論を把握しておくことです。過去問を見ると、理論を知らずとも解ける問題もありましたが、理論を知っていることが前提となっている問題も多々ありました。
ヘルスプロモーションの理論を学び、「では、それを自分の職場で実践するとしたらどうなるか?」というように、理論を実践に落とし込むような思考トレーニングをしておくと良いかと思います。
⑤精神保健
例年、ボーナスステージです。
今年も傾向は変わらず、精神疾患と第一次、第二次、第三次予防に焦点をあてた問題でした。
例年記述式の問題なので、わずかな精神保健の知識と、常識があればそれなりに書けます。
そこまでの思考量も必要とされません。
ただ、今年から問題数が多くなっており、求められる文量が増加しておりました。手が痛かった。。。
⑥医療倫理
こちらも⑤精神保健と同様に記述式の問題です。
傾向は例年まったく同じ。医療倫理におけるワードを5題ほど提示し、その意味を答えさせるというものです。一問一答式の非常にシンプルな問題で、「意味を覚えているかどうか」が問われます。
ただ曲者なのが、過去問を調べた限りでは同じワードが出題されたことがほぼなく、山がはりにくい。。。
ちなみに今年は
・徳倫理
・人間の尊厳
・医学研究における侵襲と介入
・ゲノム編集
・ヒューマンエンハンスメント
の5題でした。
何を勉強するのが良いのでしょうね。
自分の場合は学部の授業でたびたび触れることもあったので、医療倫理で問われる問題の”雰囲気”ぐらいは掴めていました。ただ、初見となるとどうすればよいか。
東大の医療倫理の赤林教授が入門・医療倫理シリーズを刊行してらっしゃるので、それらを読み込めば十分に対策可能だと思われるのですが、それでは費用対効果が大変低いと思うので、お勧めできません。
じゃあどうすれば良いのか。
東大の医療倫理研究センターであるCBELのTwitterアカウントが、けっこう精力的に医療倫理上のニュースをtweetしていますので、それをフォローしておき、時間があるときに読んでみる、とかは良いかもしれません。
⑦医事法
主に、医師を対象として想定しているような問題が多いです。
解剖や死亡診断書、画像診断などなど。
個人の感想ですが、公衆衛生大学院の試験で、ある特定の職種のバックグラウンドが有利になるような試験は不適切だと私は思っています。
医師には簡単な問題かもしれませんが、他職種からしたら「知らねぇよ」というものが多く、なぜこのような出題傾向なのだろうかと例年不思議に思っています。
ということで私にとっては捨て問。
⑧公衆衛生調査方法論
公衆衛生の調査を行う上での方法論に関する問題です。
例えば、「1次データと2次データ利用のメリット・デメリット」、「無作為抽出の意義」、「各研究手法(横断研究やコホート研究など)のメリット・デメリット」、「リードタイムバイアス」、「ビッグデータ」など。
結構幅広いですが、基本的な理解があれば、シンプルに解ける問題が多いです。
ここでも、佐々木教授の「わかりやすいEBNと栄養疫学」がお勧め書籍として上がります。
⑨医療情報システム
この分野に関しては私は完全にお手上げなので、何も言えません。
「例年、これを選択する受験者っていったい何人いるの?」というくらい自分にはチンプンカンプンな内容でした。学部時代の授業でもほぼ触れたことがありません。
問題文中のだけ紹介すると、多施設診療情報バックアップデータベース、PACS、データ移行コスト、リプレース、HON code、TCP/IPなどなど。
参考になるような本も見つけられなかったし、これを学ぶことの意義を全く感じられなかったので捨て問にしてました。
以上、9分野、いかがだったでしょうか?
一からすべてを学んでいくのは大変ですが、大切なのは「9題すべてを解く必要はない」ということです。過去問から傾向を掴んで、自分にとって都合の良い問題を取捨選択していきましょう。
以下の9つの専門家から4つを選択して解いていきます。
①疫学
②医学統計
③予防医学
④健康教育
⑤精神保健
⑥医療倫理
⑦医事法
⑧公衆衛生調査方法論
⑨医療情報システム
制限時間は80分。
専門の試験を解くうえでのポイントは、この9つの問題、難易度や問題量に幅があるということです。
常識でわいあい書けるんじゃないか?というものもあれば、20分じゃ無理だろっていうものもあります。
ですので、予め過去問を解いて、それぞれの問題の傾向と、自分との相性を把握しておきましょう。
9つの問題に対して準備をしていく必要はないです。4題、多くとも6題くらいに絞って対策しておけば良いのではないでしょうか。
そういう意味では、「いかに捨てるか」が大切になってくる問題だと思っています。
さて、各問題の傾向についてお伝えします。
①疫学
予防疫学教室の佐々木教授が授業で扱っていたテーマが例年出題されているので、個人的には「佐々木先生が出題者なのかなぁ~?」なんて思っています。
ですので、前回のブログでも紹介した「わかりやすいEBNと栄養疫学」を読んでおくのが良いかと。
問題の傾向としましては、具体的な疫学調査を例題として紹介した後に、その結果を疫学的な観点から解釈させるというようなものが多かった気がします。
例えば、「BMIが上がるにつれて肺炎発症率が上昇する。一方で、BMIが上がると死亡率は下降する。なぜこのように異なる結果が観察されたのか、考えられる具体的なシナリオを2つ提案せよ」みたいな(実際の問題をかなり要約しているので、あまりあてにしないでください汗)。
あとは、ある研究と、そこで生じうるバイアスを考察させたうえで、そのバイアスを回避するにはどのような研究デザインを組めばよいか、とかでしょうか。
こうして書くと、疫学初見の方は「うっ」と思われるかもしれませんが、実はそんなに難しくありません。というのも、①疫学で出題される問題は基本的な疫学知識があれば、その応用で十分に解答できる内容になっています。
疫学の教科書を開くと必ず書いてある因果の逆転や、交絡、バイアス、偽相関などの疫学用語がありますが、要は「これらの基本的な疫学が理解できていますか?」ということを問うている問題です。
いきなり問題文を読むと混乱してしまうかもしれませんが、そこで問われることは必ず基本的な疫学の知識で説明可能なものになっているはずなので、落ち着いて自分の中の疫学の知識を探ってもらえれば、そこに答えがあると思っています。
ちなみに、佐々木先生の予防疫学教室のHPにて、先生の講義の資料を丁寧に紹介してくださっています。
ここで語られる内容が極めて①疫学に近しい内容になっていると思うので、ぜひ読まれることをお勧めします。
②医学統計
専門の統計は、以前述べた統計学一般の問題に比べて難易度が高いです。
文系出身の私にはやや辛く、捨て問にしていました。
なので、これについてはよく分かりません。
③予防疫学
去年までは問題がほぼ毎年同じであり、狙い目だったのですが、今年からちょっとだけ傾向が変わりました。
例年、スクリーニング検査における感度・特異度に関する問題で、極めて単純な計算で答えが出せるものでした。今年もスクリーニング検査の問題だったのですが、感度・特異度ではなく累積罹患率・累積死亡率を求めさせる問題でした。難易度自体は例年とは変わっていないと思われます。
来年からどうなるかは分かりませんが、ここらへんの数字の操作が得意な人にはお勧めの問題です。
④健康教育
おそらく、保健社会学教室の橋本教授が出題者だと思われます。
というのも、橋本教授が学部時代の授業で行っていたことが想起されるような問題になっているからです。
その授業は二つのパートに分かれています。まずは、ヘルスサイエンスに関する理論の学習。そして、その理論を基にした、具体的な臨床の課題への対策の考案。
ちなみに今年の問題は「ある職場の肥満対策に、Minklerらが述べた”健康教育における専門家の2種類の関わり方”(本文中に詳細は記載されています)を適応し、それぞれどのようなアプローチにするか論ぜよ」というものでした。
対策する上で大切なのは、ヘルスプロモーションにおける幾つかの主要な理論を把握しておくことです。過去問を見ると、理論を知らずとも解ける問題もありましたが、理論を知っていることが前提となっている問題も多々ありました。
ヘルスプロモーションの理論を学び、「では、それを自分の職場で実践するとしたらどうなるか?」というように、理論を実践に落とし込むような思考トレーニングをしておくと良いかと思います。
⑤精神保健
例年、ボーナスステージです。
今年も傾向は変わらず、精神疾患と第一次、第二次、第三次予防に焦点をあてた問題でした。
例年記述式の問題なので、わずかな精神保健の知識と、常識があればそれなりに書けます。
そこまでの思考量も必要とされません。
ただ、今年から問題数が多くなっており、求められる文量が増加しておりました。手が痛かった。。。
⑥医療倫理
こちらも⑤精神保健と同様に記述式の問題です。
傾向は例年まったく同じ。医療倫理におけるワードを5題ほど提示し、その意味を答えさせるというものです。一問一答式の非常にシンプルな問題で、「意味を覚えているかどうか」が問われます。
ただ曲者なのが、過去問を調べた限りでは同じワードが出題されたことがほぼなく、山がはりにくい。。。
ちなみに今年は
・徳倫理
・人間の尊厳
・医学研究における侵襲と介入
・ゲノム編集
・ヒューマンエンハンスメント
の5題でした。
何を勉強するのが良いのでしょうね。
自分の場合は学部の授業でたびたび触れることもあったので、医療倫理で問われる問題の”雰囲気”ぐらいは掴めていました。ただ、初見となるとどうすればよいか。
東大の医療倫理の赤林教授が入門・医療倫理シリーズを刊行してらっしゃるので、それらを読み込めば十分に対策可能だと思われるのですが、それでは費用対効果が大変低いと思うので、お勧めできません。
じゃあどうすれば良いのか。
東大の医療倫理研究センターであるCBELのTwitterアカウントが、けっこう精力的に医療倫理上のニュースをtweetしていますので、それをフォローしておき、時間があるときに読んでみる、とかは良いかもしれません。
⑦医事法
主に、医師を対象として想定しているような問題が多いです。
解剖や死亡診断書、画像診断などなど。
個人の感想ですが、公衆衛生大学院の試験で、ある特定の職種のバックグラウンドが有利になるような試験は不適切だと私は思っています。
医師には簡単な問題かもしれませんが、他職種からしたら「知らねぇよ」というものが多く、なぜこのような出題傾向なのだろうかと例年不思議に思っています。
ということで私にとっては捨て問。
⑧公衆衛生調査方法論
公衆衛生の調査を行う上での方法論に関する問題です。
例えば、「1次データと2次データ利用のメリット・デメリット」、「無作為抽出の意義」、「各研究手法(横断研究やコホート研究など)のメリット・デメリット」、「リードタイムバイアス」、「ビッグデータ」など。
結構幅広いですが、基本的な理解があれば、シンプルに解ける問題が多いです。
ここでも、佐々木教授の「わかりやすいEBNと栄養疫学」がお勧め書籍として上がります。
⑨医療情報システム
この分野に関しては私は完全にお手上げなので、何も言えません。
「例年、これを選択する受験者っていったい何人いるの?」というくらい自分にはチンプンカンプンな内容でした。学部時代の授業でもほぼ触れたことがありません。
問題文中のだけ紹介すると、多施設診療情報バックアップデータベース、PACS、データ移行コスト、リプレース、HON code、TCP/IPなどなど。
参考になるような本も見つけられなかったし、これを学ぶことの意義を全く感じられなかったので捨て問にしてました。
以上、9分野、いかがだったでしょうか?
一からすべてを学んでいくのは大変ですが、大切なのは「9題すべてを解く必要はない」ということです。過去問から傾向を掴んで、自分にとって都合の良い問題を取捨選択していきましょう。
コメント
コメント一覧 (7)
SPH試験の配点ですが、
2018年入学者選抜入試は、
配点が
公共健康医学基礎 40、統計学一般 20、専門分野 120、外国語 180(得点開示したので事実です)
となり、
以前(2016年入学者選抜入試は公共健康医学基礎 80、統計学一般 40、専門分野 60、外国語 180)と大きく異なっておりました。以前の情報を信じて、専門分野(記述問題)を軽く見た人の多くは落ちたでしょう。
という訳で今後は得点配分分からないですが、まんべんなく、特に記述に力を入れるようにシフトした方がよいと思います。
というか、得点開示ってもうできたんですね。
配点については知りませんでしたが、2016年以前の公共健康医学基礎>専門分野という点数配分には違和感があります。
そして英語だけで50%も配分を占めているのですね。
そこまで英語に重点を置く必要があるのかという疑問はありますが、「入学したはいいが、英語論文も読めない」という生徒が過去に何人もおり、その反省からの是正だと聞いておりました。
採点が簡単だからだとは思います、あとは客観的ですし・・・。
配点が変わったのは、きっと深く勉強することを評価したいという表れかと思います。
英語はTOEIC ~点以上とか、TOEFL ~点以上とかでいい気がしますけどね。
英語論文は読めるのが最低限ですよね・・・。結局英語出来ればあとはなんとかなるということでしょうか。
点取りゲームが得意が人材が上から順に取られていくだけなんじゃないか、というシニカルな印象を抱いてしまいます。
一般的な大学院にありがちな、そこの学部生の方が圧倒的に有利といったこともないと(思う)ので、ロースクールみたにフェアでいいんじゃないかと思います。
勉強(して実際に得点をしっかり取れさえ)すれば受かるテスト、専門職大学院としてはいいとは思います。
東大は、テストだけで判断すると思っていますが、まあ、入ったあとはそれぞれ頑張ってねという感じでしょうか。
まぁでも、SPHは”専門職”の人に学び舎を提供するという目的だから、この形式で良いのかもしれませんね。
大学院入試がこれだけシンプルなら、鬼のような学部入試は何だったのか...という悲しさがあります(笑)
つまるところ、応用力を求めるのは、大学院として酷なのでしょう。
根本として、日本で大学院のステータスが上がらないと、そこまで難しいテストを提供するに至れないと思います。
大学入試は難しいのに、院試は・・・ですよね。
日本は大学院出身者をもう少し優遇すべきかと。